理事長挨拶

 本会は、実験動物の病理標本作製における技術の向上、新技術の導入・技術改良及び技術者間の交流を目的に、1982年に実験動物病理組織標本作製技術懇話会として発足し、1992年に実験病理組織技術研究会「The Japanese Association of Histotechnology (JAH)」と改称して、現在に至っています。1996年には日本毒性病理学会の後援を得て実験病理組織技術認定士及びその上位資格として2011年より実験病理組織技術指導認定士の資格認定制度が導入され、現在までに216名が技術認定士、26名が指導認定士の資格を取得しています。また、賛助会員として、関連企業からのご支援も頂いております。

 近年、医薬品開発における安全性研究、各種化学物質などに対する毒性研究は、国際規模で精度高く実施されています。これらの研究における病理学的評価は、組織標本の良否が評価結果を左右すると言っても過言ではなく、良質の標本は迅速で的確な病理診断を導き、不良な標本は再作製など時間の浪費と共に病理診断を困難にします。この点からも病理学的評価をする上で、病理標本作製者の技量が大変重要になります。

 一方、新たな病理関連機器や器具の開発及び様々な試薬や抗体の普及により、利便性が向上するとともに、組織切片あるいは各種手法を用いた染色標本を比較的容易に作製できるようになりました。しかし、実作業の中では、初めて試みる技術に試行錯誤したり、思いがけないアーティファクトが発生したりと、一筋縄でいかない場合も多く、常に良質な標本を作製する上では様々な問題に対応する必要があります。さらに、新たな価値観に繋げるための工夫や技術改良なども行われています。これらの課題への対応には、経験の蓄積と同時に知識を深めることが大切ですが、情報収集あるいは会員同士で意見交換を行うことも問題解決の一助となります。JAHでは、年間事業(学術集会、技術研修会、実技講習会、コントロールサーベイ、テクニカルミーティング、及び認定制度)を通してそのような問題解決の場を設け、会員の技術向上と毒性病理学分野での病理技術の発展に寄与して参ります。

 2020年7月より新たな役員体制となりました。役員一同、本会の発展のために努力する所存でございますので、引き続きご支援、ご協力をお願い致します。

実験病理組織技術研究会
理事長  五十嵐 功

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